2017年1月24日火曜日

【小説】浪花相場師伝 第十四話 GCファンド始動(後編)

第十四話 GCファンド始動(後編)

淀屋は合コンの際に、必ず医学生ではない男を参加させるようにしていた。
モデルの卵であったり、駆け出しの俳優などイケメンの男たちである。
彼らは女性たちに対するサクラだった。
もちろん、彼らからも淀屋はきっちりと参加費は取っていた。

1回の合コンで平均10名参加、100万円もの額を淀屋が預かる形になった。
合コンの金で運用するファンド、さしずめGCファンドやな。
淀屋は実王寺が開設してくれた取引口座から、信用取引口座を開設した。
難波の女帝を上回るためには信用取引しかない、が淀屋の結論だった。

信用取引を使えば、資金の何倍もの取引ができる。
だがリスクは極めて高くなり、下手すれば莫大な借金を背負い破産することになる。
そやけど難波の女帝にできて、ワテにできんことはない。
淀屋は信用取引を使って、GCファンドの運用を始めた。

淀屋が最初の合コンを開いてから、1年になろうとしていた。
今やGCファンドは、1億円をはるかに超える額を運用していた。
そろそろ、1回目の返金時期やな。
淀屋はリターンの低い株から売りにかかった。

芦屋のお嬢様。理沙は何回目かになる淀屋主催の合コンに参加していた。
淀屋の主催する合コンには、必ずイケメンの男が1人はいる。
医大生との合コンだというが、理沙はイケメンの男がサクラだと見抜いていた。
いったい、この合コンの目的はなに、理沙はいつものように淀屋を観察していた。

高級ホテルのスイートルームでの合コン。
お互いに気の合った者同士が、親密な会話を交わす。
この相手は自分にとってメリットがある相手なのか、品定めをしている。
中には淀屋の用意したサクラに群がる軽薄な女もいる。

ふと視線を感じて見ると、椅子に座った淀屋がこちらを見ていた。
淀屋が目でついて来いと合図したのがわかった。
椅子から立ち上がった淀屋は、入口へ向かって歩き出した。
理沙も淀屋の後をついていった。

淀屋はスイートルームから出ると、隣の部屋の鍵を開け、理沙を招きいれた。
「1年前のお相手と交際に至らなかったので、10万円に利息をつけて返金します」
淀屋は懐から帯封のついた札束、100万円を出すと理沙に手渡そうとした。
「何これ」、氷のような冷たい眼差しを浮かべた理沙がいう。