2017年1月17日火曜日

【小説】浪花相場師伝 第九話 教わること(前編)

第九話 教わること(前編)

淀屋は、2枚の写真を見つめたまま黙っていた。
やがて、おもむろに実王寺がいう。
「真実だということがわかってもらえたようだな。
その写真は君の物だ、他に質問はあるかな」

「今、一族はどうなってんの」、淀屋が聞く。
「いい質問だ、12代目当主の予想通りになっているよ。
12代目当主の死後、醜い権力争いが起こった。
中には非合法すれすれの手を使う者までいた。

幸いなことに、13代目当主はまだ決まっていない。
今は一族の中で、最高齢の男が形だけの長になっている。
だが影では何人もの連中が、虎視眈々と次期当主の座を狙っている。
最有力候補が、難波の女帝と呼ばれる女相場師だ」、実王寺がいう。

「相場師って、サイコロ振ったりするやつか」、淀屋が聞く。
「それは昔の丁半博打だ、相場師とは株を生業にしている者だよ。
難波の女帝は株で莫大な資産を築いた女相場師だ。
今や、難波の女帝は一族の中で最も発言力がある」、実王寺がいう。

「で、これから何を教育されるんやろ」、淀屋が聞く。
「決まっている、淀屋の当主は全てにおいて優れていなくてはならない。
難波の女帝を凌ぐ相場師になってもらう」
不敵な笑みを浮かべた実王寺がいう。

「なるほど、12代目当主の財産を使って、当主になるんやな。
そんなん、絶対、難波の女帝とやらに勝てるやん。
まるで、ドラマの主人公みたいやんか、なんか面白なってきたわ。
そうと決まれば、早う教育してんか」、淀屋がいう。

実王寺は何も言葉を発しなかった。
淀屋が実王寺を見ると、実王寺は不敵どころか凄みのある笑みを浮かべていた。
「な、なんや、何がそんなにおかしいんや、怖い笑い方すんなや」
淀屋が驚きながらいう。

「最初にいっておくが、難波の女帝は手強い。
難波の女帝の凄さは、相場で資産を増やす能力だ。
資産が多ければ勝てる相手ではない。
君には難波の女帝を超える資産を増やす能力を身につけてもらう」、実王寺がいう。