2017年1月20日金曜日

【小説】浪花相場師伝 第十一話 マネープラン(前編)

第十一話 マネープラン(前編)

大学の入学手続きを終えた淀屋は、どうすれば効率よく金を増やせるか考えていた。
元手は育ての父親が残してくれた1000万円超の現金。
大学4年間の学費は、育ての母親が残してくれていた。
だが、これからの生活費を稼がなくてはならない上に、金を増やさなあかん。

淀屋は図書館に通いつめ、株式投資について一通りの知識を身につけていた。
インカムゲインとキャピタルゲイン、現物取引と信用取引。
ファンダメンタル分析とテクニカル分析。
だが所詮は机上論、実践はこれからや、決して失敗はできへん。

1000万円から生活費を除いた額を、運用するのが最も安全策や。
だが誰でも思いつく方法や、それでは難波の女帝には勝てへん。
難波の女帝を上回るには、リスクを取らな勝てへん。
どうリスクを取ったらええんや、わからへん、淀屋は考え続けた。

そんなある日、淀屋は食料品を買いにスーパーへ出かけた。
向かい側から、幼稚園くらいの女の子と母親らしき2人が歩いてくる。
すれ違ったあと、「ハンサムなお兄さんやな」、女の子の声が聞こえた。
「そやな」、母親の小声が聞こえた。

淀屋は辺りを見回したが、淀屋の他には誰もいなかった。
淀屋は今まで女性と交際したことがなかった。
女性から好意を寄せられたことはあったが、金がないので交際を断っていた。
交際を断った理由を何人かの女性から聞かれたが、忙しいとか適当にいっていた。

そのとき、淀屋の頭に閃光が走った。
手元にある金を増やすのではなく、手元にない金を増やすんや。
他人が持っている金を集めて増やせばいいんや、簡単なことやんか。
自分の持てる全てを使い、他人の金を集めて増やすんや、淀屋は笑みを浮かべた。

やがて、淀屋の大学生活が始まった。
淀屋にとって、大学はまさしく学びの場だった。
名だたる教授たちから、学べるだけ学ぼうとした。
淀屋の専攻は経済で、常に上位の成績をキープしていた。

淀屋の大学以外の時間は、ほとんどがバイトに充てられた。
若い女性に人気のある飲食店のバイトを、淀屋は何軒も掛け持ちしていた。
「カッコいい店員がおる店教えたろか」、「うん、連れてってえな」
飲食店を利用した女性客たちから、淀屋の評判は広がっていった。