2017年3月1日水曜日

【小説】浪花相場師伝 第二十一話 実王寺との再会(前編)

第二十一話 実王寺との再会(前編)

淀屋は大学を卒業した。
だが成績優秀だった淀屋は大学院へ進むことにした。
淀屋の研究テーマは、金融工学だった。
淀屋は投資に関する工学的研究を究めたいと考えていた。

金融工学は新しい学問領域であるといわれるが、その淵源はマンハッタン計画といわれる。これは金融工学が1950年代以降、経済学会計学工学数学など様々な学問領域と接点を持ちながら形成されてきたためである。
金融工学の中でも画期的な研究としては、1950年代にハリー・マーコウィッツが示した現代ポートフォリオ理論や、1970年代フィッシャー・ブラックマイロン・ショールズらによるデリバティブの価格理論、arrison、Kreps、Pliskaらによる確率同値における無裁定性と均衡などが有名である。
金融工学におけるプライシング理論は、一物一価の考え方に基づくところである。経済学での議論における需要供給の関係においてアロー・ドブリュー証券の仮定を置くことにより、同時点での将来価値が同値なは同じ現在価値を持つ、という前提を組み立てる。
たとえば、株のコールオプション債券株式を保有している投資家は、ポートフォリオの組み合わせによって、瞬間的に超過収益を得ることができない。この関係から、3者の価格においては均衡式を得ることができるのである。金融工学の理論は、金融実務と密接に結びついており、金融工学理論から得られた算式はプライシングリスク管理会計の実務でも広く用いられており、金融工学の発展の背後には、金融実務への適用がある。
(Wikipediaより)

「YLコンサルタント」の経営は、採用した元地方銀行勤務の男に任せていた。
難波の女帝に勝つには、投資を徹底的に研究することが必要や。
運だけでは勝つことはできへん、度胸もそうや。
必ず勝てる必勝の投資手法があるはずや、淀屋は考えていた。

そんなある日のことだった。
アパートへ帰ると、アパートの前にコート姿の男がいた。
淀屋は今も育ての親と暮らしてきたアパートに1人、住んでいた。
いつか育ての親が帰って来るのではないかという思いからだった。

「久しぶりだな」、コート姿の男はよく切れるナイフを思わせる実王寺だった。
「なんや、あんたか」、淀屋が残念そうにいう。
「せっかく会いに来たのに、その言い方はないだろう」、実王寺がいう。
「仕方ないやろ、なんかいいたい事があってきたんか」、淀屋がいう。

「君に是非とも伝えたいことがあって来た」、実王寺がいう。
「ほな上がっていくか、たいしたもんは出せへんけどな」、淀屋がいう。
「遠慮なくお邪魔させてもらうとしよう」、実王寺がいう。
「相変わらずやな」、淀屋は苦笑しながら実王寺を自宅へ招きいれた。