2017年2月13日月曜日

【小説】浪花相場師伝 第十八話 理沙の選択(後編)

第十八話 理沙の選択(後編)

理沙は淀屋と大学近くのカフェにいた。
美男美女の2人は、周囲の視線を集めていた。
「投資コンサルタントの会社って何をする会社。
ヤバイことをする会社なの」、理沙が聞く。

「なんもヤバイことあらへん、至極、全うな会社や。
既に設立登記は終わってるから安心してや。
投資コンサルタントは顧客の資産を運用する会社や。
理沙様が合コンで払った金はいくらや」、淀屋がいう。

「20回は参加したから、そうねえ400万円くらいかしら」、理沙が答える。
「理沙様がワテの合コンに参加したのは25回や。
1回の参加費20万円、内10万円を株で運用していたんや。
理沙様の場合、25回かける10万円、計250万円の運用や」淀屋がいう。

「運用した結果はどうだったの」、理沙がいう。
「これや、見るがええ」、淀屋が手帳を開いて見せる。
手帳を見た理沙は言葉を失った。
手帳には、高級住宅地の芦屋で新築が買える金額が記されていた。

「ほとんどの合コン参加者は、1年経つと増やした金を受け取った。
ところが受け取らんかったのは、理沙様だけや。
受けとらへんので、こんなに増えてしもうたがな。
この金をもっと増やすために会社を作ったんや」、淀屋がいう。

「このお金を増やすだけだったら、会社を作る必要はないんじゃないの。
今まで通り、株とやらで運用していればよくない」、理沙がいう。
「合コン参加者は、金を預ければ増やしてもらえることを知った。
いまや金を預けてくるヤツがたくさんおる」、淀屋は手帳の別のページを見せた。

手帳の数字を見た理沙は、再び言葉を失った。
なに、この数字、本当にこれだけのお金を預かって運用しているっていうの。
「さすがに、これだけの金を運用するとなると個人では荷が重い。
新規開拓のため合コンも続けていく、それが会社設立の目的や」、淀屋がいう。

この男、面白い、理沙は思った。
「わたしが払って増やしたお金は資本金にしてくれていいわ。
ところで次は何をするのかしら」、理沙が聞く。
「金融のプロを雇うんや、凄腕のな」、淀屋が不敵な笑みを浮かべていった。